2026/09/11 21:36

はじめに

岡山で珈琲を作っている小さな焙煎所、吉岡珈琲焙煎所です。
今回は、「珈琲を始めて約3年、変わったことと変わらなかったこと」についてお話します。

珈琲の世界に足を踏み入れてから、気づけば約3年という時間が経ちました。最初の一杯を淹れたときのことは、今でも鮮明に覚えています。緊張しながら豆を挽き、お湯の温度を何度も確認し、抽出時間を測りながら、ようやく出来上がった一杯を口にした瞬間の記憶です。あの頃と比べると、自分でも驚くほど多くのことが変わりました。けれど同時に、どれだけ時間が経っても変わらずに大切にし続けていることもあります。今日は、この3年間で「変わったこと」と「変わらなかったこと」について、正直な気持ちを綴ってみたいと思います。

変わったこと

珈琲の味に、深みが増した

まず一番はっきりと変化を実感しているのは、珈琲そのものの味わいです。始めたばかりの頃は、レシピ通りに淹れることで精一杯でした。豆の個性を活かすというよりも、失敗しないように淹れることばかりを考えていたように思います。

けれど3年間、毎日毎日珈琲と向き合い続けるうちに、少しずつですが、自分なりの「深み」を珈琲に持たせられるようになってきました。そしてなにより嬉しいのは、お客様から「前よりも味に深みが出てきたね」「以前よりも美味しくなった気がする」というお言葉をいただけるようになったことです。

正直なところ、自分自身では日々の変化はなかなか気づきにくいものです。だからこそ、お客様からいただくそうした一言一言は、何にも代えがたい励みになりました。味の変化というのは、決して自分ひとりの努力だけで生まれるものではなく、飲んでくださる方々との積み重ねの中で育っていくものなのだと、改めて実感しています。

珈琲についての知識が増えた

3年前の自分と今の自分を比べると、知識の量は比べ物にならないほど増えました。豆の産地ごとの特徴、精製方法による味わいの違い、焙煎度合いがもたらす風味の変化、抽出方法による香りや口当たりの違いなど、学べば学ぶほど珈琲という飲み物の奥深さに驚かされる日々です。

最初のうちは、なんとなく「美味しい」「美味しくない」としか感じられなかった珈琲の味も、今では酸味の質や甘みの種類、余韻の長さなど、より繊細な部分まで言葉にして表現できるようになりました。知識が増えたことで、珈琲を飲むこと自体がより豊かな体験になったと感じています。そしてその知識を、お客様との会話の中で少しずつお伝えできるようになったことも、大きな変化のひとつです。

一杯一杯の淹れ方が変わった

淹れ方についても、この3年間で大きく変化しました。最初の頃は、とにかくレシピ通りに、時間や温度、お湯の量を機械的に守ることに必死でした。もちろんそれも大切な基礎ではあるのですが、今では豆の状態やその日の気温、湿度、さらにはお客様の好みまで感じ取りながら、一杯一杯、微調整をしながら淹れるようになりました。

同じ豆を使っていても、昨日と今日とでは最適な淹れ方が微妙に違うことがあります。そうした変化に気づき、対応できるようになったのは、日々の積み重ねの中で培われた感覚なのだと思います。マニュアル通りではなく、目の前の一杯に向き合いながら淹れる。この姿勢の変化こそが、味の深みにもつながっているのかもしれません。

変わらなかったこと

ここまで「変わったこと」についてお話ししてきましたが、この3年間、どれだけ技術や知識が変化しても、決して変わらずに持ち続けてきたものがあります。

お客様に対する感謝の気持ち

まず何より大切にしているのは、お客様への感謝の気持ちです。数ある選択肢の中から、わざわざ足を運んでくださること、一杯の珈琲のために時間を割いてくださること。そのひとつひとつが、当たり前のことではないと、開業した初日から今日まで、ずっと変わらず思い続けています。

慣れてくると、つい日常の一部になってしまいがちですが、そうならないように、毎日「ありがとうございます」という気持ちを新たにするよう心がけています。この感謝の気持ちだけは、これから何年経っても絶対に忘れたくないと思っています。

お客様と家族のような距離感

もうひとつ大切にしているのは、お客様との距離感です。ビジネスとしてお店を続けている以上、当然お客様と店主という関係ではあるのですが、それ以上に、まるで家族のような温かい距離感を大切にしてきました。

たわいのない世間話をしたり、最近あった出来事を聞かせてもらったり、時には悩みごとを打ち明けてもらったり。そうした何気ないやりとりの積み重ねが、お店を「ただ珈琲を飲む場所」ではなく「安心して過ごせる場所」にしてくれているのだと感じています。この距離感は、3年前も今も、これからも、変わらず大切にしていきたい部分です。

親近感を忘れない気持ち

お客様との親近感を忘れないことも、開業以来ずっと意識し続けていることです。知識や技術が増えていくと、どうしても専門的になりすぎたり、少し距離のある話し方になってしまったりすることもあると思います。けれど、そうなってしまっては、お客様が気軽に話しかけにくいお店になってしまいます。

だからこそ、どれだけ珈琲について詳しくなっても、専門用語を並べるのではなく、誰にでも分かりやすく、親しみやすい言葉でお伝えすることを心がけています。「また来たいな」と思っていただけるような、親近感のある空気づくりは、これからも変わらず大切にしていきたいです。

珈琲に対する思い

そして最後に、何よりも変わらないのは、珈琲そのものへの思いです。3年前、初めて珈琲の奥深さに魅了されたときのあの気持ちは、今もまったく色褪せていません。むしろ知れば知るほど、経験を積めば積むほど、珈琲という飲み物への愛情は深まるばかりです。

一杯の珈琲には、生産者の方々の努力、豆が旅してきた長い道のり、そして淹れる人の想いが詰まっています。そのことを忘れずに、これからも一杯一杯、心を込めて淹れ続けていきたいと思っています。

おわりに

この3年間を振り返ってみると、技術や知識といった「変わったこと」は、日々の努力の積み重ねによって育まれてきたものだと感じます。一方で、感謝の気持ちや、お客様との距離感、珈琲への思いといった「変わらないこと」は、これからも決してぶれることのない、自分の軸のようなものなのだと改めて感じました。

これから4年目、5年目と時間を重ねていく中で、また新しい変化が生まれてくることと思います。けれど、変わらずに大切にし続けてきたものを胸に、これからもお客様お一人お一人と丁寧に向き合いながら、一杯一杯の珈琲を淹れ続けていきたいと思います。

いつも足を運んでくださる皆様、そしてこの記事を読んでくださった皆様に、心から感謝申し上げます。これからも、どうぞよろしくお願いいたします。